業種・背景
今回ご紹介するのは、国内有数の生産規模を誇る大手製紙メーカー様での導入事例です。同社の製造プラントでは、紙の原料となるパルプの加工から最終製品の仕上げまで、多岐にわたる工程を一貫して行っています。
製紙プロセスにおいては、水・蒸気・薬品・パルプスラリーなど多種多様な流体を大量に扱います。これらの流体を制御するために、プラント全体で数千基に及ぶバルブが設置されており、その適切な動作が安定操業の基盤となっています。
特に蒸気は乾燥工程で不可欠なユーティリティであり、大口径の蒸気バルブが多数使用されています。また、薬品の注入制御や排水系統にも重要なバルブが多く配置されており、流体制御の信頼性が生産品質と直結する環境です。
長年にわたる連続操業の中で、設備の経年劣化は避けられない課題となっていました。特にバルブ内部の状態確認は、設備管理において最も困難な課題のひとつとして認識されていました。
課題
製紙プラントで使用されるバルブの多くは大口径であり、流体制御において極めて重要な役割を担っています。しかし、これらのバルブには長年の稼働による腐食や劣化が進行しており、内部リーク(弁座からの内部漏れ)の発生リスクが常に存在していました。
最大の問題は、バルブの内部リークを直接確認する手段がほぼ存在しなかったことです。プラントのバルブの多くには保温材が巻かれており、外部から弁体の状態を視認することは不可能でした。さらに、配管表面の腐食によってバルブ本体の外観からも内部の状態を推測することが困難な状況でした。
現場の保全担当者は、バルブの内部リークが疑われる場合でも、目視と聴覚に頼った検査しか実施できませんでした。蒸気の漏れ音が聞こえる場合は異常を察知できましたが、微量の漏れや騒音環境下では判別が困難であり、見逃しが常態化していました。
内部リークを正確に確認するためにはバルブの分解点検が必要でしたが、大口径バルブの分解には数日間のライン停止と多大な人工が必要となるため、頻繁に実施することは現実的ではありませんでした。結果として、内部リークの検出は事実上「諦められた課題」として長年放置されていたのです。
導入製品
この課題を解決するために導入されたのが、バルブ内部リーク検査装置「VALVE SENSE(バルブセンス)LL-VS1」です。バルブセンスは、配管内の流体挙動を音響的に解析することで、バルブの内部漏れを非破壊で検出できるポータブル計測器です。
導入にあたっては、バルブの上流側と下流側の配管に検査ポート(計測用の小口径穴)を設置しました。この検査ポートにバルブセンスのセンサーを接続することで、バルブの弁座を通過する流体の有無を高精度に検出できます。
この方式の最大の利点は、バルブに保温材が巻かれた状態や、外面に腐食が進行した状態であっても、内部リークの有無を正確に判定できる点にあります。従来は分解しなければ確認できなかった情報が、配管外部からの非破壊検査によって取得可能になりました。
検査ポートの設置は定期修繕時に実施し、一度設置すれば繰り返しの計測が可能です。計測自体は数分で完了するため、日常的なパトロールの一環として組み込むことができます。計測データはデジタル記録されるため、経年変化の追跡にも活用できます。
導入効果
バルブセンスの導入により、これまで発見できなかった内部リークの早期検出が実現しました。稼働開始直後の初回調査で、複数のバルブにおいて想定以上の内部漏れが確認され、長年にわたりエネルギーが無駄に消費されていた事実が明らかになりました。
検出された内部リークに対して優先順位を付けた計画的な補修を実施した結果、蒸気や温水の無駄な消費が大幅に削減され、エネルギーコストの目に見える低減を達成しました。特に蒸気系統のバルブ補修による効果は大きく、ボイラー負荷の軽減にもつながっています。
安全面においても大きな改善が見られました。薬品系統のバルブ内部リークを早期に発見できるようになったことで、意図しない薬品の混入リスクが低減し、操業の安全性が向上しました。漏洩による環境汚染のリスクも軽減されています。
さらに、定期的な計測データの蓄積により、バルブの劣化傾向を事前に把握できるようになりました。これにより、予防保全の実践が可能となり、突発的なバルブ故障による計画外停止の発生頻度が大幅に低下しました。設備の稼働率向上と保全コストの最適化を同時に実現しています。
- 保温材・腐食下でも内部リークを非破壊で検出可能に
- 蒸気・温水のエネルギーロスを大幅に削減
- 薬品系統の安全性向上と環境リスクの低減
- データに基づく予防保全の実現で計画外停止を削減
- 設備全体の稼働効率と信頼性が向上
