業種・背景 — 高品質が求められるアルミダイカスト製造
本事例の導入先は、自動車部品を主力製品とするアルミダイカストメーカーです。ダイカスト工法では、高温の溶融アルミニウムを金型に高圧で射出し、精密な形状の部品を大量生産します。この工法において金型の状態管理は製品品質を左右する最重要項目のひとつです。
金型には冷却水路やエア回路が複雑に配置されており、これらの経路にエア漏れが発生すると、冷却効率の低下による製品の寸法不良や巣(内部空洞)の発生など、深刻な品質問題を引き起こします。そのため、定期的なエア漏れ検査は欠かせない保全作業として位置づけられていました。
しかし、従来の検査手法には多くの時間と手間がかかり、生産スケジュールへの影響が避けられませんでした。検査頻度を高めたくても、現実的な工数の制約から十分な点検が行えないというジレンマを抱えていました。
課題 — 時間がかかり精度に限界のあった従来手法
従来の金型エア漏れ検査では、金型の各回路に加圧して圧力降下を計測する加圧試験が主に用いられていました。この方式は漏れの有無を判定することはできるものの、具体的にどの箇所から漏れているのかを特定するには、さらに追加の調査が必要でした。
漏れ箇所の特定には、石鹸水を塗布して泡の発生を確認する方法や、配管を分岐ごとに遮断して順番に圧力テストを行う方法が用いられていましたが、いずれも膨大な時間を要します。複雑な金型では、漏れ箇所の特定だけで数時間から半日以上を費やすことも珍しくありませんでした。
さらに問題だったのは、検査を行うために金型を生産ラインから取り外す必要があったことです。検査のたびに生産を停止しなければならず、検査時間の長さがそのまま生産ロスに直結していました。この状況を打破するために、より迅速かつ高精度な検査手法の導入が求められていました。
導入製品 — 音響カメラ LL-CRY-8120(CRYSOUND CRY8120)
エアモアがご提案したのは、音響カメラ「LL-CRY-8120」(CRYSOUND CRY8120シリーズ)です。CRY8120は、200チャンネルのMEMSマイクロフォンアレイを搭載した高性能音響イメージングカメラで、エア漏れが発生する際に生じる超音波(2kHz〜100kHz)をリアルタイムで捉え、漏れ箇所を8インチ高解像度ディスプレイ上にヒートマップとして可視化します。
操作は極めてシンプルです。金型に向けて本体を向けるだけで、カメラ画像に重ねて漏れの発生位置と相対的な漏れ量が色分けで表示されます。最大200mの検出距離と6倍デジタルズームにより、従来のように配管を個別に加圧・遮断する手間がなく、一度の走査で広範囲の漏れ箇所を瞬時に発見することが可能です。
検出感度も非常に高く、従来手法では見逃していた微小な漏れまで検出できるため、品質管理の精度が格段に向上します。Wi-Fi・Bluetooth対応で、検査結果は専用アプリ「Acoustic Link」を通じて画像・動画・レポートとしてワイヤレスで共有でき、報告書の作成や過去データとの比較も容易です。
導入効果 — 検査時間の劇的短縮と稼働中診断の実現
LL-CRY-8120導入後、金型のエア漏れ検査にかかる時間は劇的に短縮されました。従来は数時間を要していた漏れ箇所の特定作業が、わずか数分で完了するようになりました。これにより、検査1回あたりの所要時間が大幅に削減され、検査頻度を高めることが可能になりました。
検査精度についても大きな改善が見られました。音響カメラによるリアルタイム可視化により、従来の手法では発見が困難だった微小な漏れや複数箇所の同時漏れも的確に検出できるようになりました。検査担当者の経験やスキルへの依存度が下がり、誰が検査しても一定レベル以上の精度が確保できるようになった点も大きなメリットです。
さらに特筆すべきは、金型を生産ラインに設置したまま検査が可能になったことです。エア回路を加圧した状態でLL-CRY-8120を向けるだけで診断できるため、金型の取り外しや生産停止が不要になりました。これにより、日常的な点検の一環としてエア漏れ検査を組み込むことが可能になり、品質トラブルの未然防止につながっています。
- 検査時間を従来比で大幅に短縮し、検査頻度の向上を実現
- 微小漏れの検出精度が向上し、品質不良の予防に貢献
- 生産ラインを停止せずに検査可能となり、生産効率を維持
- 検査結果の画像記録により、保全履歴の管理とトレーサビリティが向上
- 検査担当者の属人化を解消し、標準化された検査体制を構築
