企業概要

株式会社IHI 相生工場は、発電用ボイラーやタンクなどの大型産業機器を製造する基幹工場です。長年にわたり日本のエネルギーインフラを支えてきた同工場では、自らの生産活動においてもカーボンニュートラルと循環型経済の実現を重要な経営方針として掲げています。

工場内では多数のコンプレッサーが稼働しており、圧縮空気は切断・溶接・組立など幅広い工程で使用されています。エネルギー消費量の中でも圧縮空気関連の電力は大きな割合を占めており、その効率化が省エネ戦略の要となっていました。

エネルギー可視化への取り組み

IHI相生工場では、段階的にエネルギー消費の可視化に取り組んできました。

フェーズ1(2019年)

まず2019年に、工場内の主要設備約30%を対象としたエネルギー消費量の見える化を実施しました。電力メーターの設置によって、どの設備がどの程度のエネルギーを消費しているかを把握し、改善の方向性を定めました。

フェーズ2(2022年)

2022年には、PUSHLOGや電力計を追加導入し、クラウドベースのTableauによるデータ分析基盤を構築しました。これにより設備の約90%のエネルギー消費をリアルタイムで監視できる体制が整いました。

この分析の過程で、驚くべき事実が判明しました。コンプレッサーが生産停止中にもかかわらず相当量の電力を消費していることがデータから明らかになったのです。この電力消費の原因こそが、工場全体に広がるエア漏れでした。

エア漏れ診断の成果

エネルギー可視化で浮かび上がった問題を解決するため、IHI相生工場ではエアモアによるエア漏れ診断サービスを活用しました。専門技術者による工場全体の詳細な調査の結果、合計131箇所のエア漏れが特定されました。

これらの漏れによる年間損失額は1,368,621円と算出されました。発見された131箇所のうち、115箇所(87.8%)の修繕を速やかに完了させ、年間約1,201,649円の削減を実現しました。残りの箇所についても、設備の定期修繕計画に組み込んで順次対応を進めています。

修繕作業の多くはジョイント部の増し締めやパッキンの交換など、比較的簡易な対応で完了しており、大規模な設備投資を必要としない点も重要なポイントでした。

可視化カメラの導入

エア漏れ診断サービスの効果を体感した同工場では、自社でも継続的に漏れ対策を実施できるよう、エア漏れ可視化カメラの購入を決定しました。カメラの導入後、社内5部門でデモンストレーションを実施したところ、診断サービスでは発見できなかった新たに50箇所の漏れが追加で検出されました。

特に注目すべき発見は、ある箇所の漏れを修繕した後に、配管内の圧力バランスが変化し、別の箇所で新たな漏れが発生する現象が確認されたことです。この事実は、エア漏れ対策が一度きりの作業ではなく、継続的なモニタリングと対応が必要であることを示しています。可視化カメラの常備により、このような変化にも迅速に対応できる体制が構築されました。

総合成果

エネルギー可視化からエア漏れ診断、可視化カメラの自社導入に至る一連の取り組みにより、IHI相生工場では2022年から2023年にかけて年間560万円の電力コスト削減を達成しました。

この成果は、エア漏れ対策単独の効果ではなく、エネルギー消費全体の可視化と分析に基づく総合的な省エネ活動の結果です。しかし、その中でもエア漏れの特定と修繕は、比較的低コストで即効性のある施策として大きな貢献を果たしました。

IHI相生工場では、この取り組みを継続・拡大し、カーボンニュートラル達成に向けた歩みをさらに加速させていく方針です。エア漏れ可視化カメラを用いた定期点検は、すでに工場の標準的な保全活動の一部として定着しており、今後も安定した削減効果が見込まれています。